「武漢肺炎」と台湾人の反応

台湾情勢コラム
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台湾と「誰理你們」

話は2003年のSARSの時にさかのぼる。SARSの嵐は台湾にも上陸し、674人の患者と84人の死者を出したが1、それに関して台湾もWHOに加盟すべきだという声があがった。台湾は、加盟申請のたびに中国に邪魔され、加盟していなかったのである。
このときも、ジュネーブのWHO総会で台湾の加盟が諮られた。日本や米国、英国などが全面バックアップしたが、中国の猛反対により泡と消えた。
沙祖康
その時、中国側の代表の一人である沙祖康という外交官僚に、台湾のマスコミが質問を浴びせた。
「台湾2300万人についはどうお考えか!」
沙祖康は、傲慢不遜な態度でこう吐き捨てた。
「早就給拒絕了!誰理你們!」
当時のニュース映像が、Youtubeに残っている。映像は沙祖康が吐き捨てた台詞の前からセットしている。

前半の「早就給拒絕了」はさておき、「誰理你們!」を直訳すると「誰がお前に構うものか」だが、沙祖康の台湾を見下した言い方などを加味して意訳すると、
「てめーらなんか知るかボケ!」
である。
北京のエリート外交官からしたら、
「辺境の一地方の分際でやかましいわ」
だろうが、中国エリートによくある中華思想丸出しの扱いと物言なので、私は特に驚かない。
が、台湾にとっては目の前で自分を全否定されるカノッサの屈辱ならぬジュネーブの屈辱だった。さらにWHO非加盟ゆえに最新情報が伝わらず、SARSの収束宣言がいちばん遅かったのも台湾である。
それから17年、現在でも台湾のWHO加盟は果たされていない。
他にも、台湾の地震に対する傲慢不遜な対応や、四川大地震に義援金を送っても感謝どころか、

おい、貢ぎ物(義援金)少ねーじゃねーか!

と逆ギレする中国に、台湾人は心底呆れ、怒り、そして疲れた。上記の件もそのうちの一件に過ぎない。

そして「武漢肺炎」へ

それから17年後の「武漢肺炎」、すでに述べたように台湾人の反応はすこぶる冷たい。もちろん、台湾には台湾の出来るだけの防備はするが、中国(人)に対する同情や憐憫れんびんの情を催すことはほとんどない。「ジュネーブの屈辱」を彼らは忘れていなかったのである。

台湾人の偽らざる心境をあらわすイラストが、Facebookを中心に出回っている。

誰理你們

溺れて手を伸ばし助けを求める中国に対し、台湾は

「加油」(頑張ってね)

とハイタッチだけしてなにもしない。物理的だけではない、感情すらない。ハイタッチしたお手々を「消毒」して、あとは「誰理你們」(おめーらなんぞ知ったこっちゃない)。

上の「加油」の語尾の「(棒 」が、私には見える。

 

中国人がいくらSOSを出そうが、SNSで現状を泣きわめこうが、俺たち同胞だろ?な?と泣きついても、薄情じゃねーかと罵声を浴びせても、台湾人の反応はすべて「誰理你們」。ガタガタうるせーな、こちらは旧正月で美味い飯食ってんだから邪魔するなと言わんばかりである。

事実、TwitterやFacebookで「誰理你們」を検索すると、完全に突き放しているコメントの数々が。台湾人はやさしいという一面しか見ない上に、「水に流す」徳政令ですべてチャラにしてしまう日本人には、台湾人の心の底からの憤りはおそらく理解できないと思う。

私もいちおう日本人なのでわかるのだが、日本の感覚では

「かわいそうではないか」

と惻隠の情を醸す人もいるはずである。が、それは台湾が好きという感情だけが先走って、彼らに対する知識も理解も学習欲もないあらわれでもある。ま、止めはしないが台湾の友人から2人3人、連絡が来なくなる覚悟で。

もちろん、台湾人の中にも中国を気の毒に思い、

「物資を送ってあげようよ」

「武漢加油」

「以德報怨(徳を以て怨みに報いる)の精神でいこうよ」

というやさしい人はいる。

しかし、そういう声に対するリプライが、

「おい、『誰理你們!』(ジュネーブの屈辱)を忘れたか!」

はい議論は終了。

中国の一外交官の傲慢不遜な発言によるブーメランなので私も同情の余地なしだが、中国の「誰理你們」の結果、台湾はSARSで100名近い結果を出した。現在の台湾ネットの冷酷なまでの「誰理你們」は、17年前の死者に対する仇討ちなのかもしれない。

 

続編はこちら!

□続編(マイブログ)
  1. WHO 2003年7月7日時点のデータによる。

コメント

  1. 習近平去死 より:

    私も、大陸人が大陸で幾ら死のうと勝手なことだと思っている。
    日本で流行しなければ、不治の病だろうと関係無い。
    日本政府はワクチンを開発しても、大陸やWHOに送ってはならないと思っている。
    日本人の血税で作られたワクチンを何故、反日の国に送らなければならないのか?
    非常に疑問に思う。旅行客が来ても、一部の人しか金を落とさないし、不動産を格安で買えるように日本政府がしてるせいで、不動産ばかりを爆買いしてる、反日共を助ける義務はない。

  2. zhimei より:

    いつも貴重な情報をわかりやすくシェアして下さり、ありがとうございます。興味深く拝読しております。私は中国古典文学専攻の日本人で、中国・台湾両方に留学歴がありますが、台湾留学後は断然台湾派となり、近現代史も少しは学ばねばと一念発起して学習中の者です。
    ツイッターのTaiwanHistoryJPアカウントで2020年2月4日18:09に発信された翻訳ですが、元ツイートは「深圳松崗のある男がSNSで『湖北人全部都死……多死一点湖北人。』と書いたところ、(身バレして)一群の湖北人に突き止められ、家までやってきて殴られた」、つまり湖北人が過激なツイートをした非湖北人を殴ったという説明ではないでしょうか(その説明が正しいかどうかは別として)。
    ツイッターの方にリプライしようか迷ったのですが、こちらのコメントだと即時公開にはならなくて処理しやすいかと思い(思い違いであれば申し訳ありません)、こちらにコメントさせていただきます。

    • 台湾史.jp より:

      >zhimeiさん

      はじめまして。コメントありがとうございます。
      Twitterのツイートの件、中国語を見間違えてしまい、気づいてツイートを削除しました。
      フォロワー数も増えて間違いが拡散するのは私も本意ではないので、今後は気をつけようと思います。

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