「台湾独立」とは何か-初心者でもわかる台湾政治

台湾独立とは何か台湾情勢コラム

昨日7月1日、海の向こう中国では共産党建党100周年を祝う式典が行われた。

その中で習近平国家主席は、「いかなる台湾独立のたくらみも断固打ち砕く」と述べ、「台湾統一」に強い執念と、「台湾独立」に対する強い警戒心が窺える。

さて、日本人の中では台湾(特に政治情勢)に対する無知も手伝って、「台湾独立」とは何か理解できていない人が多い。
特に、中国が声高に「台湾独立」を主張していることもあいまって、「台湾が『中国』から独立」と認識している人が多い。それは正解でもあり、不正解でもある。

今回は、その誤解を解くために「台湾独立」について解説していく。

スポンサーリンク

「台湾独立」を知るキーワード①-中華人民共和国は関係ない

中国が「台湾独立」と主張しているのは、結論から言ってしまうと詭弁である。なぜなら、「台湾独立」とは台湾内の問題であり、中国、いや、中華人民共和国は1mmの絡みもないからである。

「台湾独立」とはそもそも何か
台湾は中華民国である…ほとんどの人はそう認識しているはずである。なんだ当たり前じゃないかと。
実は、この時点である種の認知のゆがみが発生しているのである。
国際法の難しい話になるが、台湾の現在の法的地位は「未確定」。つまり、誰の領土でもないと。強いて言えば人が住んでいる空き地のような感覚である。日本政府も、1952年のサンフランシスコ平和条約において、台湾の統治権を放棄したと同時に、それを確認している(中国に返すなんて一言も言っていない)。

その「空き地」に逃げ込んだのが、蒋介石率いる中華民国である。1949年、中共(中国共産党)との内戦に敗れた国民党及び中華民国は、「空き地」だった台湾に逃げ込んだ。そしてここは自分の土地だと主張。台湾人目線だと、庇を貸したら母屋どころか土地の所有権まで取られたといったところか。

そして現在に至っている。

台湾人が言う「台湾独立」とは、この「中華民国」からの独立であり、中華人民共和国からの独立ではない。
中国は、「中華民国vs台湾人」の問題を自分の問題にすり替え、「台湾独立」をあたかも中国の問題として詭弁を弄しているのである。

「台湾独立とは、台湾人が中華民国からの独立を主張することである」
この本質がわかっていれば、中国や習近平主席の言う「台湾独立」の詭弁に騙されたり混乱しないで済む。日本人は、この本質がわかっていないから「台湾独立」にことかけた中国人の「台湾は中国である」と誤認識してしまうのである。

しかし、自称「台湾通」は数多くいるが、このような問題を解説できる人が今までいなかった日本の台湾に対する認識度の低さも問題である。

 

「台湾独立」を知るキーワード②-「台湾独立」は一枚岩ではない

「台湾独立」にも、実は何種類かに分類できる。これが第三者の理解をさらに難しくしている。
大きく分けると2種類なので、下記にて解説する。

①建国制憲派

建国制憲派(以下建国派)は、「台湾共和国(仮称)」としての独自憲法を制定、建国に至るという考えの人たちである。
ここで、「台湾=中華民国」という考えに囚われている人は、こう思うに違いない。

『建国』って、もう『建国』されているじゃないか

建国派の思想の根底には、「中華民国の否定」がある。国際法では中華民国の台湾「駐留」は無効。だから一刻も早く台湾から出て行くべきである。
その上で、「台湾共和国(仮称)」を作る。リンカーンの言葉を借りれば、”Of Taiwanese, for Taiwanese, by Taiwanese”の国を建てると。

彼らの言う「台湾」とは、台湾島及び澎湖諸島である。英語では“Formosa and Pescadores”と表現する人も多い。言い方を変えると「金門島・馬祖は台湾に含めない」のだが、ここが現代台湾情勢のキーワードになっている。
実は、アメリカの「台湾関係法」における台湾の定義も “Formosa and Pescadores”で、金門島などは含まれていない。額面通り解釈すると、台湾で「有事」が起こった場合、”Formosa and Pescadores”は助けるけど、金門・馬祖は関知しませんということなのだが、これは実際に事が起こらないとわからない。
この事実、英語や中国語のWikiにははっきり書かれていることなのに、日本語の記事には何故か書かれていない。まるで誰かが意図的に抜いたように…
金門島・馬祖の住所は現在でも「中華民国(・・・・)福建省」であり、台湾には含まれていない。建国派のスタンスは、金門・馬祖は台湾ではない部外者なので「中国へお帰り」という主張がメインである。

②中華民国リフォーム派

基本的に、「台湾独立」とはこちらのスタンス。建国派はSNSなどでは「台湾建国」と書いていることが多い(すべてがそうとは限らない)。特に、中華民国の旗(青天白日旗)を掲げつつ、「台湾独立」と書いている人は、筆者の観察による主観ではあるが、こちらと解釈しても良いと思う。
なお、「中華民国リフォーム派」というのは、筆者の造語である。

こちらの主張は、現存する中華民国の政治組織や憲法・諸法律を土台に、中身の「中華」を抜き、屋号も看板も「中華民国」から「台湾共和国(仮称)」にリフォーム(独立)するという流れである。

この構想の原点は、李登輝元総統であるとされる。
李登輝は、二段階の「独立」を構想したと言われている。
一つは「中華民国の台湾化」。中国中国というけれど、中華民国も華民には変わりがない。いくら「台湾独立」を言おうとも、台湾のフラグシップが「中華航空」では説得力はゼロである。
しかし、急進的に屋号を「台湾」にすると、海の向こうの輩がうるさいし、それ以前に台湾にいる「中国人」の反発は必至。そのため、まずは「中華民国」の中身を「台湾化」する必要がある。李登輝はそう考え、実行した。
これを中華人民共和国サイドから見ると「台独A」と言うのだが、Aプランはすでに台湾に根付いている。

お次が、国号を「中華民国→台湾共和国」にすげ替えることだが、これはかなり難しい。民進党初の総統、陳水扁氏が本当にやろうとしたのだが、時期尚早とアメリカに止められたことがあり、タイミングを一つ間違えると戦争になり台湾の繁栄がすべて白紙に戻る可能性が高い。
よって、現在は徐々に、そして確実に、一枚ずつ中華民国の皮を剥がしているような状態である。民進党も、党としての主張は①である。現在でも党是としては捨てていない。しかし、現実を直視しながら、ゆっくり、着実にリフォームしていく道を進むのだろう。
このリフォーム→台湾共和国→独立の流れを、中華人民共和国は「台独B」としている。

このように、「台湾独立」といっても①②があり、「台湾共和国(仮称)」樹立というゴールは同じなのである。が、その根本的なスタンスと、目標に至るまでのプロセスが違うのである。

台湾情勢の難しさ

以上、「台湾独立」について書いてみたが、難しいのは実はここからである。
台湾社会には、上記の独立を主張する人の他にも、ノンポリの現状維持派や中国との統一派までピンからキリまで存在している。日本人にはおなじみ金美齢氏は、人生の3分の2を「台湾独立運動」に捧げてきた運動家の顔もあるが(彼女のスタンスは①)、金氏をして「独立派は(①②合わせて)台湾の3割くらい」と主張している。
さらに、「○○は建国派」「△△は現状維持派」という区分けができず、個人によって違うのも、台湾情勢の難しいところである。しかし、台湾人は政治的立ち位置をはっきりしている人が多いので(だからSNSのプロフにも書く)、政治的には中立を装う日本人よりはわかりやすいかもしれない。
私本人も、一人の台湾ウォッチャーとして基本は①のスタンスとしてTwitterにも書き込んでいるため、似た思想の人が集まりやすい。なので主張もしやすい。

台湾情勢を勉強し、深いところに入り込んでいくためには、
「私、そんな難しいことはよくわかんない」
という八方美人ではなく、自分はこう考えるという自分の意見を持たないと入り込めないかもしれない。

最後に、「独立」についての台湾の歴史的経緯を述べたリンクを貼って終わりにする。
リンク先の主張を見ると、「台湾独立」、特に①についての立ち位置と主張がよくわかるので、まずは一読して欲しい。

次は、「中国はなぜ『台湾独立』を認めないのか」について書いていこうと思う。

 

 

 

タイトルとURLをコピーしました