台湾で慰安婦デモ?…でもちょっと待て!

台湾慰安婦 台湾情勢

本日、台湾で慰安婦に対し謝罪要求というニュースが、ツイッターのタイムラインにあがってきました。

一部の人間は、

台湾も反日だ!

と鬼の首を取ったようにはしゃいでいるのもいましたが、台湾情勢を知る人間から見ると、

「ただの中華統一促進党さんじゃん、相変わらず元気ね(笑」

眉毛一本動きません。

中華統一促進党

中華統一促進党とは、台湾で作られた政党の一つで、前身は「保衛中華大同盟」という政治団体…ってこの名前を見ればだいたいお察しだと思います。

中国との統一を主張する政党で、それも中華人民共和国が主張する「一国二制度」すら拒絶する過激派で、統一のためには暴力を含めた「どんな手段も辞さない」と公の場で宣言しています。実際に暴力事件も多数起こしており、ほぼ犯罪組織といってもいいでしょう。

先年、烏山頭ダムにある八田与一像の首が切られたというニュースがありましたが、あれも中華統一促進党の仕業です。ちなみに、あの事件が起こった時、やれ中国人の仕業だやれ朝鮮人だと日本のネットが騒いでいた中私は、いや、台湾人だ。たぶん中華統一促進党と冷静に分析し、ブログにも書きました。

結果的にそれは大当たりだったのですが、根拠は八田の像に害を与えた割には、背後にある墓には傷つけていないこと。もし中国人なら、像には指一本触れず墓を破壊したり害を加えるはず。中国には怨みを抱いた人間もしくはその先祖の墓を損壊し、死体に鞭打つ習慣が紀元前からあり、中国人の行動生態を知っていれば、これくらいすぐピンときます。
対して、台湾にはそんな習慣が全くない。ああ、これはいわゆる「外省人」や中国人の仕業ではなく台湾人だ…とピンときました。もちろん、頭の中が真っ赤に染まってますけどね。

閑話休題。

中華統一促進党張安楽

中華統一促進党張安楽

中華統一促進党のトップは、張安楽という人物。自他共に認める台湾マフィアと共に、中国とのズブズブの関係を隠そうともしない…というだけでお察しでしょう。
この顔は、現代台湾情勢を追っていくとたまに見る顔につき、これを機会に覚えておきましょう。脳のメモリの無駄ではありますが仕方ない。

 

時期は変わって一昨年の2018年、台湾は南部にある、「台湾の京都」と呼ばれている古都台南で、慰安婦像が建てられたというニュース、覚えている方はいるでしょうか。

当時、私はこんな感想を抱きました。

私

また国民党か、懲りないな(笑

そう、「またか」というのは、国民党が慰安婦カードを使ってくるのは初めてではないからなのです。

 

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台南慰安婦像の背景

慰安婦とくれば韓国というイメージが強いですが、実は台湾でもちょくちょく採り上げらています。

台湾=親日という単純なイメージしか持たないと見逃しがちですが、台湾には大陸(中国)から逃げてきた、俗に「外省人」と呼ばれる人たちと、その子孫が少なからず存在しています。
かつては「本省人(=台湾人)」との対立として取り上げられてきましたが、世代交代も進み、その構図だけでは測れない「全員台湾人」の時代。若い世代にとっては、

「昔、そんなのがあったらしいね」

という、骨董品屋にしか陳列されていない歴史用語となっています。いまだに「外省人」「本省人」で区別している人は、Windows10の時代にまだXP使ってるの?というほど情報が古いので、すぐにバージョンアップしましょう。というか目障りなのでさっさとやれ。

台湾情勢は、非常に複雑です。「台湾=親日」という一方的なものの見方しかできない人は、台湾情勢の複雑さを理解できない上に、こういう「反日」的な話題があがると、

「わたしの知ってる台湾じゃない!」

と感情的に反応してしまいます。国際情勢の分析は幅広い知識と視野を必要とするもの、80年前の日本の総理大臣が「もうわけわかんね!」という理由で内閣を投げ出したほど「複雑怪奇」な世界です。やれ親日だやれ反日だと一面的な見方しかできないのは、勉強不足以前にストレスが溜まるだけなので健康にも良くありません。

 

さて、この台南慰安婦像を建てたのは誰か。

調べてみると「台南市慰安婦人権平等促進協会」という、名前からして胡散臭い団体が中心となっています。ここの連絡先を調べてみると、国民党台南支部と同じ。像の設置場所も公有地ではなく、国民党の私有地。これは法的には別に問題ないと思われるので、勝手にやりなはれでしょう。

つまり、慰安婦像の設置主は国民党、それを人権団体という隠れみのを使って大プロパガンダをやったという経緯となります。

 

台湾版、お前が言うな

中国国民党は、1949年に台湾に「亡命」して以降、「大陸反攻」をスローガンに「中共」こと中華人民共和国と対立してきました。信じられないでしょうが、ほんの22~3年前までは明日戦争を起こしてもいいような臨戦態勢だったのです。
戒厳令絶賛進行中の台湾に在住していた人に話を聞いたことがありますが、会社の従業員に少なからず秘密警察がいて、電話も政治的な話になると急に切れる…つまり盗聴なんてごくふつうでした。なぁ~んだ、中華人民共和国と変わらないじゃないかと。

その紅組共産党青組国民党の対立の最前線が、金門島という福建省の小さな島でした。

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矢印の部分が金門島ですが、中国福建省厦門(アモイ)市と目と鼻の先です。

中国留学中、アモイから金門島を見たことがあります。アモイも島なのですが、両島の距離は余裕で泳げる距離、双眼鏡があれば島の人が手を振る姿がはっきり見えるほど、「すぐそこ」なのです。

そんな金門島は臨戦態勢の頃、一般人が立ち入ることができない島ごと軍事機密でした。私が台湾に住んでいた頃は渡航可能でしたが、何か特殊な書類を書く必要があったか、事前に申請が必要だった気が。

そんな金門島には、1956年から「軍中特約茶室」という娯楽施設が存在していました。「831部隊」とも呼ばれ、ネットではこちらの方が主流です。

これは最前線の兵士用の慰安所、スタッフは売笑婦です。売笑婦という言い方が気に食わない?ならば、慰安婦と呼びましょう。

それだけであれば、なんだただの軍の慰安所かと、世界史的に見ると大したことではありません。しかし、国民党は大陸出身の「同胞」には手を付けず、未成年の台湾人を娼婦として動員、時によっては通学の女子学生を拉致していました。

国民党の兵士は、台湾の村々を襲い、手頃な若い娘をさらって自分の嫁にしていた事実もあります。これも台湾史を根を詰めて学ばないと知ることのない、日本では絶対にしられることのない歴史です。中には姉妹が強引に「外省人」と結婚させられ、

「あいつら絶対に許さん!」

と怒りをぶちまけていた、日本語世代の人の話も聞いたことがあります。
話だけを聞くと、『銀河鉄道999』の機械人間の人間狩りや、『北斗の拳』の世界が連想できました。あれって漫画・アニメの世界だけじゃなかったのだと。

この慰安所は1990年代の民主化、つまり李登輝氏が総統になるまでは軍の極秘。知らぬは台湾人民ばかりなりだったのですが、当時は戒厳令下、存在をバラしたら国家機密漏洩罪かなにかで銃殺刑が待っていたそうです。


この台湾版慰安婦は、2014年に「軍中楽園」という映画にもなりました。4日間で2800万台湾ドル(約1億円)の興行収入を得たほどのヒット作となりました。日本でも上映されたので、見た方もいるでしょう。

映画の効果もあり、「国民党立台湾慰安婦」の存在は周知の事実となりました。

□参考サイト

この事実に対し、国民党は謝罪の「し」もしていません。それどころか、必要悪だったと開き直っているのですが、それが逆に国民党が慰安婦ネタを封印される呪縛となっています。

立法院(国会)でも国民党が慰安婦をネタにはしています。しかし、

国民党「日本の慰安婦!」

民進党他「軍中楽園!」

はい終了。

軍中楽園は紛れもない事実のため、国民党の盛大な地雷のおかげで全く話が盛り上がらない。つまり、国民党が慰安婦ネタを持ち出せば持ち出すほど、

「お前が言うな!」

と盛大なブーメランとなって返ってくる…慰安婦と騒げば騒ぐほど、自分らの黒歴史がクローズアップされてしまうのです。おそらく、明るみに出ていない「国民党慰安婦」ネタ、まだあると思いますよ。

 

台湾人の反応

中華圏情勢に関して、私は感情的に反応しません。今は陸に上がった魚状態とは言え、腐ってもエキスパート。

「台湾見損なった!」

「台湾製品不買だ!」

とカッカして何も見えない連中の感情的意見とは一線を画し、冷静に情勢を見つめるのが常。感情的になると逆に盲目になり、見えるものも見えなくなります。

大衆の熱狂の渦に入るな、自分も巻き込まれて流される。ビルの10階から通行人を俯瞰的に観察しろ。ただし、双眼鏡は忘れるな。

26年前、無学無教養、血の気と鼻息だけが荒かった若造に対し、懇々と外国の見方を教えてくれた先輩留学生の言葉が、現在でも血となり肉となって身についています。

 

台湾人の反応を見るまでは悲観も楽観も無用だと、台湾のネットの声を一通り見てみましたが、案の定「お前が言うな」が多数。

「また『中国人』の仕業か」

「831慰安婦像まだ~?」

と、831部隊の名前を出してツッコミを入れている人も多数見受けられました。現地の反応は至って冷静。

831を持ってくれると、「中国」国民党としてははなはだ困ってしまいます。建前になってしまったとは言え、国民党の使命は「祖国統一」。その手土産として、台湾人には立派な「中華民族」になってくれないと困るのです。

その「中華民族」「台湾人」とのアイデンティティのせめぎあいが、現在進行系で続いている。それが現代台湾情勢です。

国民党の焦りと国内事情

慰安婦ネタなど何度やっても軍中楽園ブーメランなのに、何故今回また自爆不可避の地雷に手を出したのか。日本にとっては一件Bad Newsに思えるこの慰安婦像設置、冷静に情勢を観察するとむしろGood Newsだったりします。

最初このニュースを見た時は、慰安婦ネタで新しく叩けるロジックでも編み出したのかな!?と思ったのですが、当日の除幕式の馬英九前総統の演説を聞いてみると、特に新しいネタはありませんでした。

□関連記事

「謝罪ガー」と「補償ガー」しか出てこず。なんだ新ネタないのかよとガックリしたほどです。しかし、ブーメランネタにすがりつかないといけないほど、国民党は切羽詰まっているなということを感じました。

2016年1月、台湾では総統選挙が行われました。結果、民進党の蔡英文総統が選出されたことは周知の事ですが、同時に立法院選挙、日本で言えば衆議院議員選挙も行われていたことは、知らない人が多いと思います。日本は総統選挙しか報道せず、なんだか台湾で選挙やってるらしいね~くらいの認識でしたが、台湾が中国になるかどうか、国と民族の存亡を賭けた瀬戸際だったのです。

その結果は、若者が作った伏兵政党「時代力量」が躍進、民進党も史上初めて立法院で過半数を獲得。国民党は全くいいところなしというほどボロボロに負けたのです。

何故負けたのか。国民党の馬英九政権が中国に近づきすぎ、台湾人に警戒されたからです。この選挙の結果は、台湾人が「中国」と「中国人」に対しNOを突きつけたということです。

 

台湾の歴史は、「外来政権に支配された歴史」でもあります。

江戸時代初期のスペイン・オランダから始まり、鄭成功、日本、そして国民党(中華民国)…台湾人は「民族自決」を味わったことがありません。これを約30年前、李登輝総統(当時)が「台湾人の悲哀」と表現しました。

台湾の将来は台湾人が決める。そんなもの当たり前といえば当たり前ですが、そんな当たり前のことができなかった、いや現在もできない国が隣にある。
台湾のご飯おいしい、台湾大好きとキャーキャー言っていれば日台友好だと思っているのが日本人のおめでたい脳みそですが、確かに初っぱなはそれでいい。が、何十回も台湾に行きました、でも歴史何も知りませんはただの阿呆。耳障りですがこれが私の見解です。

 

で、国民党が、不倶戴天の敵のはずの中国と結託した結果…それが拒絶反応となり総選挙の議席数という数字で出てしまい、国民党は少なからずショックを受けたのです。

かといって、国民党は既に、

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上の画像のような状態(笑 今更「台湾回帰」はできない…。

台湾人には「売台党」と石を投げられ、私には「中國共産黨臺灣聯絡處」って改名すれば?とブラックジョークをかまされるほど、堕ちてしまったのです。

その傷がまだ癒えていないのでしょう、「出してはいけないネタ」を出すほど、彼らは追い詰められている。そういう見方もできます。

また、現地のニュース記事を見ていると、「慰安婦像」というネタで民進党に揺さぶりをかけた、台湾内の権力争いの色合いが強い。つまり日本は関係ない

海外情勢は国内情勢の延長という言葉があります。その逆も然りで、内輪の争いのネタに「海外情勢」を出してくることは、「中国」ではよくあることです。

これは『三十六計』という計略のイロハを書いた書物にある『指桑罵槐』(桑を指して槐(えんじゅ)を罵る)で、表向きは日本を叩いているものの、本当に批判している相手は(日本に近づく)民進党と台湾民衆というわけで。こんな計略は「中国」では日常茶飯事ですが、「中国人」のやり口には『三十六計』がよく出てきます。

2018年の国民党の慰安婦にしろ、2020年の中華統一促進党の慰安婦がどうだのも、与党・政権党である民進党に揺さぶりをかけたい、そういう思惑があります。慰安婦は言わばそのネタ、そして二つの組織の背後にあるのは…もう私が書くまでもありませんよね。

 

そして3つ目は、現在史上最高に良好と言える日台関係に、少しでもヒビを入れたいという魂胆もあるかと私は踏んでいます。
ネタですが、Facebookには
「祖国と統一?なら日本と統一だ!」
「両岸一家親?ああ日本と台湾だよね(笑」
という垢があり、けっこうな人気を経ています。そういうネタで盛り上がれるほど、日本に対する親近感、裏を返せば中国に対する嫌悪感が根底にあります。日本人は「親日」だけに目を向け、「嫌中」は差別だ、かわいそうだ、そんなの私の知ってる台湾人じゃないと臭いものには蓋をする傾向がありますが、それにより台湾を正しく見ることができない「認知の歪み」が発生しています。「台湾バイアス」とでも仮称しておきます。
「中国人」にとっては、そんなに日本にベクトルを向けてくれると、自分らの居場所がなくなる…自分らが「中国人」であるためには台湾は「中国」でなければならない。まことに勝手な理屈ですが、彼らはそういうロジックで動いています。だから曖昧でぼんやりした「中華風のにおい」を出して台湾人のアイデンティティを揺れ動かしています。

が、そんな事情も知らず、知ろうともせず、表層だけの現象だけでやれ見損なっただ、もう台湾に行かないとか感情的に反応することこそ愚の骨頂。

正直、いちいち感情的に反応する人は、昨日はOK、今日はNGな海外情勢を語るなんてやめといた方が身のためです。精神が持たないし、そういう人こそ、

「してやったり」

と向こうの思う壺(カモ)なのだから。

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