アタマコンクリ-台湾に残る日本語

アタマコンクリ台湾に残る日本語
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アタマコンクリ

台湾に残った日本語は、日本統治時代を経験した日本語話者の減少で年々と少なくなっているが、それでも根強く残っている単語は多い。

その中でも、一風変わった「日本語」を今回紹介する。それが今回の主役、「アタマコンクリ」である。

台湾のTVやラジオを聞いていると、しょっちゅう聞くわけではないが、時折耳にする。実際に聞くと明らかに日本語なのだが、なんとなく意味がわかるようなわからないような、少し不思議な香りがする言葉である。
「アタマ」は「頭」ということは、難なくわかる。では「コンクリ」は何か。これは「コンクリート」のことで、今でも業界ではコンクリートの略称として使われる。私個人も「コンクリ」と言うこともある。

「アタマコンクリ」を日本語で書くと、「頭コンクリ」。
頭がコンクリートのような奴→頭がコンクリートのように固いとなり、「頭が固い、融通の利かない人」という意味となる。日本語でいうと「石頭」に相当すると思って良い。
最近では、頭がコンクリートのように働かない、転じて「頭悪い」というニュアンスでも使われ、若い世代の間ではこの意味で使うことが多いようである。

この「アタマコンクリ」、けっこう市民権を得ている言葉である証拠に、阿達馬孔固力」という立派な(?)字が当てられている。これを北京語で読むと「アタマコンクリ」。ウソのようなホント。他にも、「阿搭馬恐固力」「阿達馬控固力」などの当て字もある。「阿達馬孔固力」の部分は、日本語の発音のまま「アタマコンクリ」で大丈夫。

こんなものを作っている人もいる。

「頭コンクリート」でもいいらしい(笑

ある日、台湾の掲示板を覗くとこんな質問を見かけた。

台湾人と、中国閩南人の区別の仕方はどうするの?

様々な答えがありましたが、中でも多かったのが、台湾語の中にある日本語を言ってみるということ。その中で、

『アタマコンクリ!』と言ってみ。反応しなかったら中国人だw

という迷解答があり、飲んでたコーヒーが逆流した。

アタマコンクリの立役者はあの人だった!?

「アタマコンクリ」は台湾語のスラングとして、親から子へ細々と伝えられてきた言葉だった。が、ある日これが大舞台に出る時が来た。それも意図しないところで。

1994年3月、中国浙江省の千島湖で台湾人観光客24人を含む30人が強盗に襲われ、船が放火された事件があった。俗に「千島湖事件」という。
私事ながら、当時中国への留学が確定していた時だけあって、

俺、山賊が出るようなところに留学するのかよ…

と非常にブルーになったので、非常に覚えている事件でもある。

当然、台湾当局は抗議するものの、中国の対応は一言で言うとやる気なし。

中国当局
中国当局

数十人死んだくらいでgdgd言うなアル!!

この塩対応にイラッときたある人が、

アタマコンクリ!!!

と公の場で言ってしまった。実際はもっとキツいことまで言ったそうだが、「アタマコンクリ」がインパクト強かったのか、それがテレビで流れ台湾で知らぬ者はいない「日本語」になってしまったと。

その「アタマコンクリ」を一躍スターダムに押し上げた発言主が、

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この人。
ちなみに、「アタマコンクリ」は台湾学者伊藤潔の著書に書かれていたことだが、李登輝総統(当時)は「共匪」という言葉を使っていて、日本の産経新聞でも書かれていた記憶がある。台湾人でさえも「この言葉久しぶりに聞いた…」と驚いたほど、李登輝さんは憤りはかなり高かったわけで。

アタマコンクリは日本でも使われていた!?

この「アタマコンクリ」は日本語なものの、現在の日本では使われていない。それでは、台湾で独自に進化、いや魔改造された日本語なのか!?

変わった「日式台語」として、日本人の朝風呂の習慣に、

朝から風呂って…日本人頭どうかしてんじゃね?

というカルチャーショックから転じたあさぶる(阿撒不魯。語源はもち「朝風呂」)」というものもある。意味は「常識がない」「めちゃくちゃ」「ろくでもない」。これらは台湾で独自進化した「台式日語」であろう。

また、どううやら戦前の日本でも「頭コンクリ」が使われていた形跡もある。Twitterで「『頭コンクリ』って聞いたことある?」とアンケートを採ってみたところ、大多数が「ない」だったが、中には「学校の先生が使ってた」「祖父母の影響で自分も使ってる」という意見も。
おそらく、日本人が使っていたのを耳にした、または戦前に流行語として台湾に伝わったものの、日本では時代の流れとともに廃れ使われなくなった。しかし、台湾では戦後も化石のように残り、今でも使われている。そんな推定もできないことはない。

アタマショート

実は、「アタマコンクリ」の他にも、一風変わった日本語が残っている。それが「ショート」。電気がショートするのショートです。
北京語でも「秀逗」という当て字があるほどポピュラーで、現代の草食系男子大学生が日本統治時代にタイムスリップする、『大稲埕(だいとうてい)』というパロディー映画でも、「オートバイ」と共に出てくるフレーズである。

この派生型で、「アタマショート」というものがあり、「頭おかしい」みたいなニュアンスになる。純正北京語なら「你腦筋有問題嗎?」といったところか。

ネイティブによるアタマコンクリ実例集

日本人がいくらブログで理屈をこねても、百聞は一見、いや一聴に如かず。『アタマコンクリ』なんてホンマに使ってるんか!?と疑がっている皆さん、実際に耳で確認していただこう。

下の中国語字幕にも注目。ちゃんと「阿達馬孔固力」と出ているのも確認して欲しい。

①ニュースキャスター編

www.youtube.com

正真正銘の台湾のニュース番組。「アタマコンクリ」は2回出現し、0:46に柯文哲前台北市長が、1:35あたりにアナウンサーが「アタマコンクリ」と言っている。

②舞台劇編

何かの劇だが、0:25くらいから見ると、唐突に「アタマコンクリ」が出てくる。その後、ガンナムスタイルのBGMと共に出てくる少年が、「アタマコンクリ王子」。しかし、この「アタマコンクリ」、なんだか言い方が卡哇伊(かわいい)。

何か台湾語知ってる?

と台湾人から聞かれた時、一度何か知っている台湾語を話してみよう。発音がメチャクチャでも、かなり喜んでくれるはず。しかし、どうしても発音に自信がなければ、

アタマコンクリ!!

と言ってみると良い。相手はなんでそんな言葉を知っているのかと、腰を抜かすに違いない(笑

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