3.「おはよう」「こんばんは」と言ってみる
「こんにちは」は中国語で「你好(ニーハオ)」。これは問題ないでしょう。
しかし、「おはよう」「こんばんは」はどう言うのでしょうか。
旅行会話であれば、すべて「ニーハオ」で突っ切っても何の問題もありません。しかし敢えて朝と晩に限定したい場合もあるかもしれません。
中国では「おはよう」は
早上好(ツァォシャンハオ)
と言います。
「こんばんは」は、
晩上好(ワンシャンハオ)
まずは、これを頭に叩き込んで上で、台湾人バージョン行きます。
「おはよう」
早安(ツァォアン)
「こんばんは」
晩安(ワンアン)
違うでしょ。
こうしてブログに書いているくらいなので、私は中台の「おはよう」の違いは理解しています。頭では理解しています。しかし出てくるのは…
早上好!
もう癖なんで仕方ない。以前、台湾へ行った時も、台北の宿で派手に
早上好!
をやらかしてたので、私の周りにはビミョーな、生ぬるい空気が流れていました…いやいや私日本人だし(笑
部屋(ドミトリー)が同じだった台湾の若者も、
「あれ?雰囲気は日本人なんだけど『早上好!』と大陸の中国語だし…中国人?でもなんか違う…あれ?なんだかよくわからなくなってきた…」
とかなり困惑していたようです。「タネ明かし」をしてあげると、なんだぁ~!という安堵の顔をしておりました。得体の知れない妖怪のように思われていたようです。若いの、世の中にはコテコテの中国普通話を話す日本人もいるのだよと教授しておきました。
台湾人が使う「早安」は中国人は使わず、そもそも知らないと思います。
中国人の「早上好」はどうか。上の例のとおり、台湾人は知識としては知っているはずなものの、実際には使わないはずです。
対して「晩安」はどうか。
実は、中国人も使います。しかし、中国人は「おやすみ」という意味で使い、「こんばんは」という挨拶では使いません。NHK語学講座で学習中の日本人の中には、「晩安」は台湾では「こんばんは」で使うのか!とビックリしている人もいるはず。これ、大人の事情によりNHK中国語講座では絶対教えてくれない中国語だから。
あと、台湾独特の表現として、
午安(ウーアン)
というものがあります。こちらは午後の挨拶に用いられるもので、中国普通話で翻訳すると「下午好」に相当します。が、中国で「下午好」なんて表現、まず使わないでしょう。
私も初めて台湾で「午安」を聞いた時は、はぁ?と聞き返したほど、中国では全く馴染みのない表現です。
中国人か台湾人かわからない場合、台湾風に「早安!」「晩安!」と言ってみましょう。
キョトンとしたり無反応であれば中国人、あるいは香港人など台湾人以外。
「ツァォアン」「ワンアン」と反応が返ってきたら、まず間違いなく台湾人
飲食業などで外国人が入ってきて、
「どっちなんだろう…」
となった時に、これ、使えますよ。夜なら「ワンアン!」と言って反応があれば台湾人、なければ台湾人ではない可能性が極めて高いから。
ちなみに、「モーニング娘。」は中国語で「早安少女組」と書きます。台湾でも中国でも同じ書き方なのですが、この中国語がどちら発祥かは…ここまで読んだらもはや説明不要ですよね。
4.電話番号、部屋番号、または数字の羅列を言わせる
これは、2.3に比べるとちょっと高度な応用編になります。
部屋番号や電話番号は当たり前ですが数字です。この数字の「1」が今回のキーワード。単独で読めば中国・台湾共に「イー」と読むのですが、部屋番号や電話番号になると中国には「ヤオ」という独特の言い方があります。
漢字で書くと「幺(么)」。
「1」は「7」の「チー」と発音が紛らわしいために、聞き間違いがないよう「1」を「ヤオ」と言う習慣があり、中国ではふつうに使われています。
ちなみにこれは、麻雀を知っている人であれば、「タンヤオ(断么九)」のヤオでお馴染みです。
対して台湾はどうか。
使うには使うそうです。しかし、軍隊でしか使わない言わば業界用語なので、通常の会話で使うことはまずありません。自衛隊では旧軍時代からの習慣により0を「まる」、海上自衛隊では2を「ふた」1と呼ぶのと同じことでしょう。
たとえば、「1137」という番号があったとします。部屋番号でも電話番号の一部でも結構です。
中国人は、必ず
ヤオヤオサンチー
と読みます。
台湾人は「ヤオ」を使わないので、
イーイーサンチー
となります。
これは、中国で習ったか、それとも台湾で中国語を学んだか、くっきり分かれます。前者であれば100%「ヤオ」派だし、後者は後者で100%「イー」派。もちろん、私は前者です。
中国語がわからなくても、「イー」と「ヤオ」は簡単に聞き取れるので、これも頭に入れておくと、慣れたらすぐにわかるようになります。
「アタマコンクリ」と言ってみる
中国と台湾の中国語、この二つはベースが同じ北京語なものの、血のつながった兄弟でも全く違う環境で育つと他人以上の違いが出るように、ビミョーな違いを生じています。
台湾で使われている中国語はふつう、「台湾華語」と呼ばれています、私が学んだ時は「國語」でしたが、最近台湾人の知人に聞いたら、
もう使いませーん
と言われてしまいました。私のデータベースが古かったのか…。
それはさておき、現在の台湾華語の特徴は台湾語の表現がけっこう入っていることです。しかも、台湾語には日帝…もとい日本統治時代50年の影響で日本語が予想以上に入り込んでいます。
その中でも、「アタマコンクリ」という妙な日本語も残っています。ウソのような本当の表現で、「阿達馬孔固力」という立派な(?)字まで存在しています。「頭+コンクリート」のことなのですが、元々は「石頭」「石部金吉」、転じて「頭悪い」という意味でふつうに使われています。発音も中国語ナイズする必要はなく、日本語のままでOKです。
これは元々台湾語のスラングで、台湾語ネイティブ以外には使われることがありませんでした。つまり「台湾人」でも客家語話者や原住民、いわゆる外省人は知らなかったと。
私の記憶が正しければですが、1994年、浙江省の千島湖で台湾人ツアー客が盗賊に船ごと襲われ全員が惨殺された、「千島湖事件」というものがありました。これ、日本でもけっこうニュースになり、中国に留学に向かうべく荷物を整えていた私は
「おいおい、盗賊が出るような国にオレは行くのかよ…」
と身震いした記憶があります。
この事件で現地ガイドを含め約30人が殺されたのですが、生命の値段など一銭五厘以下の中国の対応は
30人死んだくらいでgdgdうるさいアルよ!
中国のやる気ない反応に苛立った李登輝総統(当時)が、
「中共は馬賊と同じじゃねーか!」
と言ったのですが(実際は「共匪」くらいキツいこと言ってたはず)、その時につい、
「アタマコンクリ!」
も言ってしまったそうな。それから台湾中に知れ渡ってしまい、現在では知らない人はいないというほど広く浸透しています。
台湾でしか使われていない、台湾華語のフレーズを話して相手の反応を見る上級テクニックですが、「アタマコンクリ」は日本語のまま発音するので、日本人にも言いやすい。
最後にネタ明かしをすると、この方法、台湾の掲示板に書いていたことなのです。
「同じ言葉を使う福建省南部の人間と台湾人、どう区別する?」
というお題で議論が進んでいたのですが、
「『アタマコンクリ!』と言えばいい。キョトンとしてたら中国人だ」
という迷回答があり、飲んでいたコーヒーが逆流しそうになりました。
あとは、
「におい」
中国人:八角などの香辛料のにおい
台湾人:さりげなくフルーツのにおい。しかし稀に臭豆腐のにおいw
と嗅覚で区別する方法もありますが、あくまで番外編です。
このように、中国語でも大陸中国と台湾ではお互い独特のものがあるので、中国語がわかれば簡単ですが、それがわからないとけっこう厳しいところがありました。
しかし、こうして簡単な、誰でも知っている中国語にも大陸・台湾でクセがあり、そのクセを見極めると比較的容易なことがわかったと思います。
それも、たぶん…あくまでたぶんですが、ネイティブのどちらも、これには気づいてないと思いますよ(笑