台湾総統選の熱気がようやく冷めてきたころ、一人の老婦人がひっそりと息を引き取った。
□参考記事
享年97歳1。彼女は家族とともに総統・立法院選挙の投票を終え、「台湾の勝ち」を見届けた後、これで自分の役目は終えたが如く後生に故郷の命運を託し、この世から去っていった。
彼女の名は王陳仙槎、名前を聞いてこの人だと思いつく人は、日本人では専門家以外まず皆無だと思う。当然ながら私もその一人であった。
しかし、「王育霖の未亡人」となると話は別である。表現はいささか不謹慎だが、まだ生きてたのかという驚きが正直であった。
王育霖という名は、台湾ではおそらくほとんどの人が知っている、台湾史における有名どころだと感じる。そして、台湾史最大級の悲運の人でもある。
が、日本人の間では彼の名を知っている人は、やはり専門家以外知る人はいないと思う。その証拠に、彼の事について書かれた説明が、日本語ではほとんどないのである。
今年も二二八事件の日が近づいてきた王育霖。今回はの人生を通して、台湾史を振り返ってみたいと思う。