旧制台北高等学校物語 外伝『台北高校物語』

台北高校物語台湾史
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「あそこ」とは…台湾にある日本の本屋

台湾の紀伊國屋書店

「あそこ」とは、台北の紀伊國屋書店のこと。
台湾に住んでいた20数年前年、よくあそこに暇つぶしに行ったものですが、構内も広いあそこならあるかもしれない。よし、行くか!

というわけで、ホテルのベッドから跳ね起きて早速地下鉄(MRT)に乗り、紀伊國屋書店がある最寄り駅へ。

 

宿を飛び出した後に気づきました。20年前の紀伊國屋書店は駅前(っても当時はMTR藍線は工事中で駅なんてなかったけれど)にあるそごうの中にありましたが、いつの間にか移転したようです。そごうとケンカでもしたのかね?
それはさておき、移転しても最寄り駅は変わらずなものの、書店がある百貨店へは駅から10分ほど歩かないといけないのが玉に瑕。あーめんどくさい。
10分くらい黙って歩けよ!と言いたくなる気持ちはわかりますが、「溽暑(じょくしょ)という言葉にふさわしい昼間の炎天下で体力消耗しまくりの上、決して体育会系ではない私にとって、人混みをかきわける10分はチョーきついのです。

 

微風廣場 Breeze Plaza

そして着きましたるは、「微風廣場 (Breeze Plaza)」というショッピングモール。
「微風」と名前がついたショッピングモールは台北だけでも何店舗かあるようで、ここは新しく出来たショッピングビルのようです。しかしまあ、駅と駅の間の、悪い意味で絶妙な場所に作りやがって。

 

台湾の紀伊國屋書店台北店

現在の紀伊國屋書店はここの5階にあります。無印やユニクロも入っていますが、今の私には紀伊國屋しか眼中にない。

 

台湾の紀伊國屋書店台北店

5階に着くと、そこは紀伊國屋書店一色。日本と遜色はなく、むしろ日本に舞い戻ってきた感じさえします。
日本の紀伊國屋書店でも、大型店になると「洋書コーナー」がありますが、台北店も同じように地元の人のための「中文書(中国語)」コーナーと「日文書(日本語)」にエリアが分かれています。

台湾旅行のお供なサイト「台北ナビ」には、紀伊國屋書店内に日本の本を検索できる「KINO NAVI」があると書かれています。
(参考記事:紀伊国屋書店[Books Kinokuniya] | 台湾ショッピング・買物-台北ナビ

しかし、2017年8月時点ではなくなっているらしいのでご注意を。店員に聞いたらはっきり「現在没有(ない)」と言われました。数年前の話なので、今は復活したかもしれませんが、気になる方は現地でご確認を。

それはさておき、検索機械がない以上、店員に聞いてみるしかない。
日本書のコーナーの奥に「服務台」というサービスカウンターがあり、そこで在庫の有無を聞くこととなります。

 

台北の紀伊國屋書店

さすがは天下の紀伊國屋書店、台北にあっても本の数は圧倒的。特に台湾関連の書籍は豊富で、日本では見たこともないような本も。台湾関連本は、ここ数年で雨後のなんとかのように増えてはいるものの、こんなにあったのか!?と改めて驚きを感じました。

ただ、台湾に限らず海外の紀伊国屋の日本書は、日本円の1.5倍~1.7倍が相場。短期滞在の観光客は書名だけチェックして帰国後買えばいいわけで、まず手を付けないと思います。が、どうしても今読みたい、手に入れたい本がある…という場合はカウンターで聞いてみましょう。
日本語は…おそらく通じるでしょう。でないと日本書の検索カウンターの意味がない。私のように中国語でやり取りできる人間ならいいけれど、中国語が話せない日本人が探しに来たらどするのだと。

『台北高校物語』は中国語の本です。なのに何故日本書のコーナーに向かったかというと。この本、実は日本語翻訳バージョン(日文版)もある…らしいのです。
個人的には別に中国語バージョン(中文版)でもいいっちゃいいのですが、日本語版があれば出来ればそっちにしたいのが本心。
外国語を「使う」という行為は、傍目で思っている以上に脳のCPU稼働率が高くなります。そのため心身ともにけっこう疲れます。通訳をみっちり2時間ほどやった後はファミレスへ走り、チョコパフェをおかわりするほど食っていましたが、それほど脳を酷使しているということです。

脳のエネルギーを消費する事は、黙読を含めた「理解」も含みます。エネルギーが有り余っていた若い頃なら、

ふん、この俺様に日本語を読ませようっていうのかい!

と、鼻息を荒くして中国語版にしていたけれど、アラフォーになると出来れば無駄なエネルギーは使いたくない、省エネモードなお年頃に。円熟したというのか、単に年を取ったというのか。

で、カウンターで『台北高校物語』の在庫を聞いたみたところ、残念ながら日本語版は紀伊國屋書店をもってしても置いておらず。日本語版GETは幻に終わりました。
しかし、やっぱ台湾やなーと思ったことがその後の対応。
カウンターのおねーさん、在庫なくてごめんねーと前置きして、

中文版ならあるかもしれないから、メインカウンターで聞いてみるといいわよ。

とご丁寧な対応をしてくれました。まことに気持ちの良い接客である。
もしこれが中国だったら…目が覚めるような美人が面倒くさそうな顔をしながら客を睨みつけ、

「メイヨウ!」(没有。「ない」という意味)
と吐き捨てられてはいおしまい。逆に、満面の笑みで答えられたら鳥肌が立ちます。そして、殺されるような恐怖を感じて無意識に逃げていることでしょう。

それはさておき、お言葉に甘えて中央にあるカウンターで『台北高校物語』の画像を見せ、在庫を聞いてみました。レジの若いおねーちゃんがマンガ担当らしきおばさん、もといマダムを呼び、彼女がひと目見て、
「ああ、『台北高校物語』ね!」
わかったと反応するまで1秒かからなかったくらいの激速反応。かなり有名な本なのか。ちょっと待っててと言い残され待つこと約2分。

 

台北高校物語

出てきたのは間違いなく求めていた『台北高校物語』でした。お値段はNT$200(≒720円)也。

しかし、探してもらっている間にもう一冊、欲しい本を思い出しました。

「北城百画帖」
という本です。
台湾人が描いた、日本統治時代の昭和10年前後の台北をモデルにしたマンガです。
作者が大正時代の文化からインスピレーションを得た作品で、ストーリーはフィクションながら、時代考証は大学で学んだ考古学的手法で吟味したノンフィクション作品。
内容の情報はほぼゼロなものの、買わない後悔より買って後悔、歴史家として一つ目を通しておく価値はありそうな作品とみなし、買っておこうと。

 

『台北高校物語』を誇らしげに持ってきた店員さんに対し、

私

ごめん、探して欲しいのもう一冊見つかったんやけど…

顔文字で表現すれば (;人;)ゴメーンな感じでお願いモードの私に、店員はもう〜という顔をし、

「ホントそれだけ?また途中で思い出しちゃダメよw」

とまたマンガコーナーへ走ってくれた店員さん。
店員さんもかなりマンガに精通しているようで、『北城百画帖』の画像を見せるとやはり一発でわかったよう。こちらも2分ほどで捕獲してくれました。

紀伊国屋にはあるはずという私のギャンブルは、今回は当たり当たりの大当たり。Mission Completeとばかりに、意気揚々と引き揚げさせていただきました。

 

『台北高校物語』の中身はどうか

『台北高校物語』は文字通り、旧制台北高校の歴史をマンガで解説した本です。

 

台北高校物語
台北高校を主人公とし、台北帝国大学や台北一中など周囲の学校も擬人化され、三澤校長や教壇に立った教授陣も描かれています。

 

台北高校物語

旧制高校生の格好もこうしてマンガで描かれており、襟章の「L」が文系、「S」が理系ということもこれで知りました。
後で掘ってみると、この襟章は台北高校だけでなく全国の高校共通ということも。

 

台北高校物語
『まんが日本史』のように、事実を淡々と進んで淡々と終わるというものではなく、ところどころにジョーク等を入れて飽きさせない工夫も感じられます。
さらに、「影の黒幕」として日本統治時代史の台湾的権威が監修しているので時代考証も問題なし。歴史アレルギーのある人でも、ビジュアルで一つの学校の歴史を読み解けます。

ただ、全体的に絵が粗っぽいなという点と、パート2を作ろうとしたのか、終わりがやけに中途半端になっているとこが少しマイナスですが、そこは学生さんの作品なので仕方ない。
読んでみた全体的な感想は、老体に鞭を打って紀伊國屋書店まで足を運んで、全く損はなかったと満足です。

 

風の便りによると、この作者さんはイラストの勉強をするために日本の専門学校に留学中だそうで、第二弾以降の歴史アニメの制作にも意欲的だとのことです。
また、自分が歴史と何の縁もない状態から歴史マンガを書くことになったことから、マンガを通して歴史に興味を持って欲しいと述べています。

 

『台北高校物語』はかなりニッチな歴史漫画ではあるのですが、台湾史、特に日本統治時代史に興味がある方は一度目を通してみては如何でしょうか。当時は日本史の一部であった台湾史の何ページかが勉強できるはず。値段も700円ちょっと、ジュンク堂書店で少し買っただけで諭吉一枚が軽く飛んでしまう専門書に比べたら、安いものです。

後で調べてみると、台湾のネット書店である「博客来」に日文版(日本語版)売られておりました。

台北高校物語
(リンク:https://www.books.com.tw/products/0010641538?sloc=main

サイト自体に日本語がないので要中国語ですが、海外への発送も可能です。興味があればお一ついかがでしょうか?ホントはAmazonに売っていれば良いのですが。

□マイブログ(前編)

 

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