日本のサブカルを通して海外に日本文化が拡がっている。その速度と反響具合は、日本人の予想を超えているほどである。
こんな記事がある。
「katsu(カツ)」や「donburi(丼)」「karaage(唐揚げ)」などの単語がオックスフォード英語辞典に掲載されたという記事である。
英国のオックスフォード大学が編集している、「Oxford English Dictionary」なるものがある。
世界一権威がある英語辞典とされ、一般論として外国の言葉がに単語が掲載されると
「おめでとう!あなたは晴れて英単語として認められました!」
と「英語」となるとされている。
オックスフォードとくればケンブリッジ、実はケンブリッジにも同じ英語辞典がある。こちらも英語学習者で知らない者はいないほど有名なのだが、オックスフォードほどの権威はないようである。
18世紀から19世紀にかけ、イギリスとフランスで「世界共通語争い」が繰り広げられていた。軍配は説明するまでもなく英語に上がったのだが1、その理由の一つは、英語の世界各国の言葉を吸収するその柔軟さにあったとされる。フランス語は、そこはやや保守的に走ってしまった感がある。
英語は、古くから日本語もけっこう吸収している。
Everybody Samurai Sushi Geisha, beautiful Fujiyama…
米米CLUBのレジェンド曲、”Funk Fujiyama”という歌のサビだが、昔のガイジン様が思いつく日本語は概ねこんなところである。
が、意外な単語も英語化している。19世紀はじめが初出という”tsunami(津波)”もそうだが、近ごろは日本のサブカルの世界的浸透により、色んな単語が英語化している。エロアニメは”hentai”の一語で済むし(笑)
しかし、”tsunami”は除いて、まだオックスフォード様のお眼鏡にはかなっていないようで、ネットではふつうに使われていても、掲載はされていないことが多い。
では、どんな日本語が掲載されているのだろうか。それを見ていこう。
オックスフォード英語辞典に載っている日本語
まずは、無難なところでは、
Origami
Haiku
Bonsai
Hiragana
Katakana
etc…
などがある。これくらいは、だいたい予想の通り。
しかし、
こんなのが英語になってるの!?
という単語もあったりする。
Walkman
SONYのウォークマンのことである。Walkmanという言葉は、そもそもは当時の会長だった盛田昭夫が思いついた和製英語である。
ウォークマンのイギリス販売の際、現地の社員に猛反対をされた。
仕方なく別の名前で販売したものの、ミュージシャンが積極的に”Walkman”を使い始め、彼らの後押しでWalkmanが定着することに。
現在は、オーストラリアを除いてWalkmanに統一されているが、オーストラリアは先に商標登録されていたらしく、現在でも使えない。
そんなWalkmanは、本場の英語にバージョンアップした数少ない和製英語である。
kawaii
「かわいい」とそのままである。ちゃんと形容詞としてオックスフォード英語辞典に掲載されている、立派な「英単語」である。
日本サブカル、特に漫画やアニメが世界中で人気となり世界中の人が使い始めたのが、この”kawaii”
英語にも”cute” “pretty”という「かわいい」があるのだが、「かわいい」より使用範囲が狭い。
人にもモノにも何でも使え、さらに意味も中立的な”kawaii”は、非常に使い勝手がよろしいというわけで。特に女の子の間で大人気となった。
“kawaii”はオタクの間やネットスラングとしての価値しかない。私はそう思っていたのだが、オックスフォード英英辞典に載っているということは、いわば地下アイドルが一躍メジャーデビューといったところか。
また、まだオックスフォードには未掲載だが、”sugoi”(すごい)もcoolと同じ意味でけっこう使われている。
kanji
「感じ」ではなく「漢字」である。
漢字は、そもそもは“Chinese character”である。おそらく学校で習う「漢字」の英訳はこれのはず。
が、やはり日本のサブカルの影響と、日本語的に表現すれば”kanji”の方が画数が少ないからか、我々の想像以上に”kanji”だらけ。また、「日本語で使われる漢字」をkanjiと表現しているニュアンスもある。
これも最初はネットだけの現象かと思っていたのだが、知らない間に”kanji”が主流になっていた。
5.cosplay
なにこれ?ローマ字そのまま、「コスプレ」である。
“manga” “anime”も「日本の漫画」「日本のアニメ」と完全に英語化されており、アメコミなどの”comic”やディズニーなどの”catoon”とは完全に区別されている。
そもそも、コスプレは”Costume play”の略であり、”Walkman”と同じ和製英語であるのだが、これもオックスフォード辞典に掲載されているオタク力の恐ろしさ。
世界中の英語を監視してる(らしい)オックスフォード大学英語協会(?)が認めたのだから、コスプレってもはやバカにできない。
“cosplay”は動詞でもあり名詞でもあり、名詞として「コスプレをする」は”have a cosplay”となるようである。
ここで、一般人がまず使うことがなさそうな英語のイディオムを。
cosplay as A from B
で、「B(漫画・アニメ名)のA(役)のコスプレをする」という意味になる。
例文)I’m cosplaying as Goku from Dragonball
(「私はドラゴンボールの孫悟空のコスプレをしています」)
見た目でわかるっちゅーねん(笑
bento
弁当、我々の社会では空気のように存在するこれも、実は日本独自の文化。日本統治時代の経験がある台湾では、便當という言葉に変化しながらも文化として残っている。
この弁当文化が近年世界にバレてしまい、日本人の知らないところでブームとなっている。
日本サブカルを世界に広めたのは間違いなくフランスだが、この”bento”を「発見」し拡散させたのもフランス。パリでは駅弁コーナーを設けたら数時間で売り切れ御免、最近はフランスの風土に合った仏式Bentoも研究開発されているという。
そして現在、”Japanese style lunch box”とまあくどくど言わなくても”bento”の一言で通じる。
gyoza
実は、餃子まで英語になっていることを知っている人は少ない。
“kanji”に同じく、もともとは中国から伝わったものではあるのだが、日本文化として伝わったのだろう。野球のWBCで日本代表として参加したアメリカ生まれメジャーリーガー、ラーズ・ヌートバー選手も、はっきり
「母がよく作ってくれたから、“gyoza”は大好物さ」
とインタビューで答えていたが、この時はてっきり、日系だから母が“gyoza”と言ってたのを覚えただけかと思っていた。実は「英語」だったのである。
中国人が怒り狂いそうであるが、ご安心を。中国語の”jiaozi”もオックスフォード英語辞典に掲載されている。
フード関連ではその他に、natto(納豆)やmochi(餅)、yakitori(焼き鳥)などがある。しかも、yakitoriは英語初出が1960年代からと意外に古い。
個人的には、そろそろOmurice(オムライス)が掲載されるんじゃなかろうかと推測している。それくらい、Omuriceは「日本に行ったら絶対食うべきJフード」にロックオンされている。
kakiemon
ああ、あの猫型ロボットのことね…
ってそれはドラ○もんや!
世界のPokemonすら未掲載だったので、さすがにドラえ○んは載っていなかったが、kakiemonは載っている。
”kakiemon”とは肥前焼き物の酒井田柿右衛門のこと。江戸時代に欧州で大ブームとなり、中国や欧州では模倣品も作られたほど世界を席巻した。
筆者は焼き物関連には詳しくないが、『濁手素地』という乳白色の素地だけでも美しくて見とれてしまうとか。
honcho
ホンチョー?そんな日本語あったっけ?
と日本人だからこそ混乱してしまうが、実は少し綴りが変わっている日本語起源の言葉である。
これ…「班長」なのである。
基本的に”head honcho”という形で用いて、「現場リーダー」や「その部署のトップ(だからhead)」という意味で使われている。感覚的にはまさに「班長」。
アメリカ起源のアメリカ英語ではあるものの、オックスフォードはもちろん、ケンブリッジ大学編纂辞書、そしてアメリカ英語の権威Webstarにもちゃんと掲載されている立派な英語。honchoと綴るものの、アメリカ英語では日本語のまま「ハンチョー」と発音する(英国では綴りのまま)。
起源は、太平洋戦争時代に日本陸軍の捕虜から聞いた「班長」からという説2と、終戦後の日本進駐軍GIが使い始めた説3があるが、文としての初出は1947年(昭和22年)であることは確かとのこと。
ところで。
漫画界の大作、『進撃の巨人』の登場人物の中でも主人公をしのぐほどの人気があるのが、「人類最強の兵士」ことリヴァイ。
彼の役職は「兵士長」だが、一方でリヴァイ班のトップの「班長」でもあった。
アニメの英語字幕では、「兵士長」「班長」どちらも”Captain”となっている。翻訳としては間違いではないものの、リヴァイの役職的に”honcho”ってビンゴな単語なのだから、遊び心も含めて”(head) honcho”が適訳じゃなかったのかな〜!?というのが、個人的な所感である。
こんなブログ記事もあるので、『進撃の巨人』に興味があればどうぞ。
最後に
日本語は、日本でしか話されていない言語ではある。が、その歴史の古さから意外な言葉が英語として浸透しているのである。
特に最近は、ネットによる情報ボーダーレス化や(お隣の何カ国はそうでもないがw)、漫画アニメを経由した日本文化の拡散で、次はどんな日本語が英語化されるのか想像するのも悪くはない。