
台南の目抜き通りに建つ林百貨。
日本人にとっては昭和や大正的な懐かしさを感じるこの建物は、日本統治時代の1932年(昭和7)に、日本人の林方一という山口県出身の人物が設立した「ハヤシ百貨店」(または「林デパート」)がベースとなっている。

ハヤシ百貨は日本統治時代の台湾の百貨店の象徴として、台北の「菊元百貨店」、高雄の「吉井百貨」と並び「台湾三大デパート」と呼ばれていた。
戦後は製塩工場のオフィスや官庁の別館などにも使われたが、最近は使い道がなくなり荒れるに任せていたこの建物が、歴史的建造物としてリノベーションされ、2013年に「林百貨」として事実上の復活を遂げた。
現在では、台湾の新たな観光名所として定着している。

この屋上には、日本統治時代に存在していた「デパート屋上神社」がそのまま保存されていることは有名である。
が、他にもある「戦争史跡」が残されているのはご存じだろうか。
時は大東亜戦争、ハヤシ百貨は台南市内でも一、二を争う高さであった。
そのため、屋上には敵機来襲のために対空機銃などが置かれたそうだが、1945年(昭和20)3月1日の台南空襲によりハヤシ百貨も「軍事施設」として攻撃を受けた。
デパート内にはその痕がくっきり残っている。


空母から発進した米軍艦載機による機銃掃射の痕である。

直撃弾を食らうと人間の胴体に穴が開くくらいの威力があると聞いたことがあるが、壁に開いたこの深い穴を見ればさもありなんである。
機銃掃射の痕は日本にも意外なところに残っていたりするので、近くを訪れた時は見てみたい。


ところで。

林百貨では、ハヤシ謹製どら焼きも売っている。味は日本のどら焼きと全く同じで、少し上品ささえ感じる味である。
ちょっと変わった台湾土産にも面白い。

なんで台湾のお土産なのにどら焼きなんですか?
と不思議な顔をされるかもしれないが。