【初心者向け】2020年台湾総統選挙・立法委員選挙を総括する② 立法院選挙は本当に「勝った」のか?

台湾情勢コラム

2020年立法委員選挙の結果

まずは、今回の選挙の結果を見てみよう。

立法院の定員が113名なので、57名以上獲得すれば過半数獲得となる。民進党が61議席なので、初めて過半数を獲得した前回に続き過半数をキープ。民進党の黄金時代到来かという予感を思わせる。

また、結党以来ずっと議席を確保していた親民党が、ついに議席ゼロになったことも、ささやかながらニュースである。親民党は見方によっては国民党以上の親中政党、やはり中国のお手つきが効いたのだと思われる。

 

が、2016年の選挙の時の増減比較を付け加えると、民進党の減りが大きく、日本では「惨敗」と報道されている国民党はむしろ増えている。これで「惨敗」とはどこの数字を見て言っているのだろうか、私には偉い人の分析がわからない。

もう一つのデータがある。

2016年と昨日の各政党の得票数と得票率のデータだが、民進党の比例代表の数字が約マイナス5%と大きく減っている。逆に国民党は11%増。これでは「大勝利」なのはむしろ国民党の方かもしれない。

この数字では、民進党は素直に祝杯を…というわけにはいかないことがおわかりであろう。

では、何故これだけ数字が下がったのか。時代力量や新規政党の民衆党などは上がっているので、既存政党に対する不満もあるだろうが、他にも理由があるはずである。その大きな理由と思われるものがある。

台湾政界の鵺、爆誕

今回の立法委員選挙での台風の目となったのは、「台湾民衆党(臺灣民眾黨)」という正当である。

台北市長の柯文哲氏が立ち上げた政党だが、緑(民進党寄り)でもなく藍(国民党寄り)でもなく、自身も緑になったり藍になったりと、まるでぬえである。少なくても、現在民進党とは仲が悪いということだけは確かなようである。

今回の選挙も、民進党候補柯文哲氏者擁立の選挙区に敢えて候補者を立て、票を割らせて「民進党を落とすため(=国民党候補者を当選させる)」の選挙戦術を立ててきたようである。自分の政党の候補者も「生け贄」にするそのやり方は、かなりの反感を呼んでいるが本人は

「選挙は(票)数が取れればいいのだよ」

と全く気にしていない様子である。実際、立法院の比例で5議席を獲得しているので、戦術的には大成功といったところか。また柯市長自身もキャラが濃い分アンチも多いが、とにかく人気があるので台北を中心に根強い支持層を持っている。今回も、台北を中心に軒並み「民進党候補者が落ちている」

まことに政界の鵺である。正直なところ、やり口はむかつくのだが結果がすべての選挙において「戦いは勝てばいいのだよ」と冷酷に割り切る柯文哲と民衆党は、今後怖い存在になりそうである。願わくば、民衆党旋風は今回で終わりにして欲しいものであるが。

おわりに

日本メディアの勝った勝ったという報道とは裏腹に、「圧勝」ではないことがこれまでのデータからわかると思う。過半数を取った民進党は確かに勝ったことは勝ったのだが、決して楽観できる数字ではない。2016年の選挙で虫の息になったライバル国民党が息を吹き返したのだから。

これはやはり、蔡英文政権への不信任としての評価もできる。蔡英文は確かに圧勝した。

が、Twitterなどネットの声を集めていると「蔡英文もイヤだけど他候補(韓国瑜・宋楚瑜)はもっとイヤだ」という消去法が多いことも確かである。金美齢氏が言っている「ガチの藍(国民党支持者)が3割、ガチの緑(民進党支持者)が3割。台湾の選挙は残り4割の牌の取り合い」の「3:3:4」理論でいくと、今回の「4割」はかろうじて民進党になびいたと言える。

しかし、「4割」はどこに流れるかわからない。勝った勝ったと胡座あぐらをかくと、次の選挙で「4割」が相手側に流れてしまう。次はどちらになびくのか、それは新蔡政権が第一期とどう違う色の政策を出してくるか、それ次第だろう。少なくても、前回と同じことをしていたら民心が一気に逆流することになるだろう。

コメント

  1. どんむ より:

    読ませていただきました!
    台湾で中国語を勉強したことがある、台湾好きです。
    今回の選挙、おっしゃる通り全然民進党の圧勝というわけではないですよね。
    昨年1月に習近平があの演説をし、それに対しての蔡英文の毅然とした姿勢が評価され、その後の香港デモが追い風になっているということですよね。

    出来立てのサイトのようですが、今後ともチェックします。
    頑張ってください。

    • 台湾史.jp より:

      >どんむさん

      拙ブログをお読みいただきありがとうございます(^^)
      台湾の選挙、総統選は確かに圧勝だったのですが、立法院選挙は「負けではないけれど…」という感じですね。
      (過半数は取ったから結果オーライでしょうけど)
      おそらく、既存政党への不満があらわれていると思います。民衆党は伸び、時代力量もお家騒動で空中分解寸前の割には前回より票数が伸びてますし。

      まだまだこれからのブログですが(グランドオープンは2月のはずだったので…)、またお越しいただければと思います。
      Twitterもやってるので、Twitterをされていたらそちらもよろしく!

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