日本では、「鬼」といえばおなじみ二本の角が生えたあれだが、中国にはそんな「鬼」は存在しない。
「鬼」と言えば幽霊のこと、つまり英語のghostのことである。
日本語に「鬼軍曹」「鬼嫁」という表現がある。
日本人が日本語の思考で解釈すると、説明不要なとおり筋肉ムキムキのこわもてや、気が強い女性というイメージとなるのだが、中国人が読むと、青白い顔をしたモヤシのようなやさ男に、病弱でいつも寝込んでいるようなか弱い女性に。
日本語の「鬼」は力強さ、たくましさを感じる体育会系となるが、中国文化圏の「鬼」は青白い顔をしてなよなよとした”幽霊みたいな奴”となり、日本とイメージが逆となる。
中国語の「鬼」には、もう一つ意味がある。
中国語ではわかっているのだけれども、日本語どう説明すればいいのだろう…語彙力不足につき辞書の力を借りることとする
『中日辞典』(小学館)によると、
「悪い行為や悪い癖を持っている者に対する蔑称」
ああ、そうそう、そんな感じ!
例えば、
酒鬼:呑兵衛、アル中
胆小鬼:臆病者
というような感じである。
現在は完全にやめているものの、かつての私はヘビースモーカーだった。なので、中国に住んでいた頃は
煙鬼:ヘビースモーカー
だった。
が、それがあまりにひどかったので、実際に周囲の中国人に言われていたのは、
火車頭:(蒸気)機関車
常にタバコをくわえてふかしていたので、その姿がまるでSLのようだと。寝てる時以外、常に「煙を吐いて」いたからな〜(笑
話の道草:日本でも有名になった「鬼」の使い方
この中国語の「鬼」、日本でもある言葉で一時期有名になった。
一つ目が「鬼城」。
テレビでは「きじょう」と読んでいたが、これは「鬼」と「城」をそのまま英訳すると「ゴーストタウン」。
地方政府がデタラメな都市計画でニュータウンを作ったものの、住む人がほとんどいない「鬼城」と化したニュース、これは中国のトレンド用語としてすっかり有名となった。
もう一つが、「日本鬼子」。画像の趣旨が少し違うが、勘弁して欲しい。
中国語で「リーペンクイズ」なのだが、文字通り日本人を罵った言葉である。英語のJapみたいなものと思ってよろしい。
ちなみに留学時代、行きつけのレストランの服務員(店員)とスキンシップとばかりにセクハラし放題だった私は、来店すると、
日本鬼子来了~(笑
と女の子がキャーキャー言って逃げ、
ほれほれ、逃げないとお前のおっぱい揉んじゃうぞ〜(笑
と私が追いかける構図。事情を知らない客の目が点になっていた。
しかしこの日本鬼子、もっとキツいバージョンがある。
それが「東洋鬼子」。
「東洋」も日本語と中国語で意味が違い、中国語では「日本」を表す。
「洋」はいわゆる西洋(≓欧米列強)のことだが、近代になり「東から新しい『洋』(=日本)がやって来やがった」というニュアンスが元になっている。
この「東洋鬼子」はさすがに中国では死語となり、もはや現代中国で聞くことはない。というか、今の中国の若い衆、「東洋鬼子」って表現、知ってるのだろうか。