日本人が知らないモンゴル人の嫌中感情ーなぜモンゴル人は中国人が嫌いなのか

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モンゴル人の嫌中感情。モンゴル人はなぜ中国人が嫌いなのか 東亜コラム(台湾・中国・香港情勢)

朝青龍のポスト、えらい怒っているけれども、この怒りの意味を理解できる日本人は、正直少ないと思います。

「蒙古」とは中国がモンゴルに対し一方的に付けた名前であります。「モンゴル」の音訳だからいいじゃんって?
いやいや!それは「日本人」だから思うのであって、モンゴル人にはたまったものじゃない。

…これも説明すると長くなりそうなので、近日中にまたブログに書くか。

地政学上では中国と仲良くせざるを得ないモンゴルですが、モンゴルの反中感情は我々の予想を超えています。
日本人の「嫌韓」「嫌中」なんて、幼稚園児の「お前の母ちゃんでーべーそー」程度のかわいいもの。モンゴルの嫌中は、冗談抜きで生命に関わります。

中国とモンゴルの歴史的因縁は、モンゴル帝国(元王朝)の因縁もありますが、本格的に始まったのは19世紀のこと。

清王朝は皇帝こそ満洲族でしたが、事実上の「満洲人=モンゴル人連合帝国」
モンゴル人の要求もあって、モンゴルへの漢民族の進入は厳禁でした。漢族も広大なゴビ砂漠を越える気もなく、外モンゴルは「国の中の国」の真空パック状態でした。

が、18世紀後半から19世紀くらいにその縛りも緩み、中国人商人がゴビ砂漠を越えロシアとの交易のためにモンゴルを中継地点にしたのが始まりです。

19世紀の清の時代、モンゴルに渡った中国人はモンゴルの真ん中に「買売城」(商売町)という名前の、交易中継基地を作ります。この「買売城」は町並みも完全に中国風の中華風城塞都市でした。
そこで中国人は「相当アコギなこと」をしたらしく、モンゴル人の中国人に対する怨みの根っこはここにあります。
具体的に何をしたのか。歴史書を読まなくても司馬遼太郎のモンゴルに関する書籍を読めば書いています。そして、そらさもありなんと思ってしまうことでしょう。

そして20世紀、中国の清王朝が滅び中華民国へ、ロシアも革命でソ連となり、モンゴルはどちらかへの側に付くことを余儀なくされます。
モンゴルは「人民共和国」として、世界で二番目の社会主義国となりましたが、これは別に社会主義が好きだとかソ連が好きというわけではありません。

中国に従うかロシアに従うかの究極の二択を迫られたモンゴルは、

モンゴル人
モンゴル人

中国と一緒なんて絶対絶対絶~~対ごめんだ!

という消極法で「ソ連」「社会主義」を選んだだけ。事実、ソ連の社会主義がどん詰まりになると、世界で最も早く社会主義を捨てた国の一つになりました。モンゴルの手のひら返しは脱兎のごとく激速でしたが、社会主義もよっぽど嫌だったのでしょう。

社会主義国となったモンゴルがまず何をしたか。中国風の建物が並んでいた「買売城」を、チベット寺院一つだけ残してすべて更地に。そこに新たにロシア風の建物を建てイチ、いやゼロから街を作り直しました。それが今のモンゴルの首都ウランバートルです。

中国色を跡形もなく消す…それだけでもモンゴル人の中国人に対する感情を垣間見ることができます。

ところで、外務省が出している海外安全情報の「モンゴル」で、こんなことが書かれています。

1.歴史的背景から中国人に対するモンゴル人一般の潜在的な感情には複雑なものがあります。街頭で日本人が中国人と間違えられ,モンゴル人に殴られる事件等のトラブルが時折発生しています。

外務省もやっと「比較的ストレート」に書き出したかと。10年前は奥歯に物がはさまったような、「察しろ」的文言。読んでいる方も不明瞭な文章でした。
「歴史的背景」とは、私が上に書いた19世紀以降の事情のこと。実際はもっとドロドロしていますが。

この注意喚起、日本だけではありません。アメリカ国務省の安全情報にもこんなことが書かれています。

Nationalist groups sometimes mistake Asian-Americans for nationals of China, Japan, Korea, or Vietnam, other known targets of such groups. In general, Mongolians are not well disposed to ethnic Chinese.

抄訳「モンゴルの民族主義者は、アジア系アメリカ人を、中国、日本、韓国、ベトナムの国民と間違うことがあります。一般的に、モンゴル人は中国人に対してあまり好意的ではありません

米国国務省HPー国別安全情報(モンゴル)

あまりどころか、モンゴルでの実感では「めちゃくちゃ嫌い」の類だと思いますが、奥歯に何かが挟まったような書き方、なんかアメリカらしくないな。

私本人、モンゴルでえらい目に遭いました。というか、「街頭で日本人が中国人と間違えられ,モンゴル人に殴られる事件」の被害者の一人でもあります。「殴られてケガして入院しただけ」で済んだだけラッキーかも…。

モンゴル人は、さすがは騎馬民族か、男女問わずめちゃくちゃ気性が荒い。デフォルトが朝○龍クラス、白○や旭●鵬なんかもう聖人君子レベルです(笑

「嫌中」にしても、ヨーロッパなどでは「Are you Chinese?(中国人か?)」とワンクッション置いてきます。我々は、胸を張って”No, Japanese”と言えばそれで問題なし。
ヨーロッパで1日多いときには2〜30分に1人ペースで絡まれ相当うざかったでしたが、”Japanese”と答えておけばなんのこともない。危害を加えられたり罵声を浴びたことは、一度たりともなかったです。

ところが、モンゴル人はそんなの聞いてきません。

モンゴル人
モンゴル人

に〜はお〜♪

筆者
筆者

???(と振り向く)

モンゴル人
モンゴル人

こいつ中国人だやっちまえ💢💢💢💢💢

いきなり集団襲撃。さすがは遊牧民族。これで「てつはう」でも放たれたら、鎌倉時代の元寇じゃないかと(笑

正直、パスポート携帯してたのと、通訳さんが

通訳
通訳

その人中国人じゃない!日本人だよ!!

と駆けつけてこなかったら、果たしてどうなってたやら。

モンゴル人の中国嫌いはいかほどかというと。
まずは、不文律だそうですが公の場での漢字禁止(国境は除く)。「漢字=中国語」というイメージがあるため、漢字を見ると強い拒絶反応を起こすのだとか。

今だから言えますが、私が仕事でモンゴルに着き、日本大使館とJICA駐在員に言われた第一声が、

大使館&JICA
大使館&JICA

モンゴルで中国語は絶対にしゃべらないで下さい!

で、上述の「リンチ事件」が起こったので、

大使館&JICA
大使館&JICA

だから中国語しゃべるなって言ったじゃないですか!

筆者
筆者

わし何もしゃべってへんわ💢

それはさておき。
そういう体験もあって改めて意識してウランバートルの街を歩いていると、確かに中国語の文字が全くない。
中華料理屋はあるにはある。が、よ~~く見ると英語でごくごく小さく“Chinese restaurant”と書かれていたり、店に入ってメニューを見せられ、そこで初めて中華料理屋だと気づくほど。

こんな話も現地で聞きました。
ウランバートルの中国大使館近くの道が凸凹で、大使館がモンゴル政府に修繕してくれとお願いしたそうな。しかし、モンゴル政府はお金ないとつっけんどんな対応。
結局、中国が自腹で修繕したそうですが、そこで
「この道は中国政府がお金を出して修繕しました」
と書かれた幟かプラカードを、モンゴル語と中国語で掲示したそうです。
それを見たウランバートル市民は激怒。

道の真ん中に肥溜め置くんじゃねーよ!!

くらいの生理的嫌悪感を感じたそうで、結局壊されたそうです。

極めつけはこれ↓

モンゴル日本センター

JICAが作った「モンゴル日本センター」です。
私がここを訪れた時、たまたま日本語検定の受験受付初日でした。センター内は日本語勉強中のモンゴル人全員集合のような雰囲気。こんなに(日本語)勉強している人がいたのか!とビックリしました。

しかし、「日本」って漢字やん…同行のモンゴル人通訳さんをちょいと煽ってみました。

筆者
筆者

これ漢字ですよ?漢字はそもそも中国語ですよ?ダメですよね?(^皿^)

通訳
通訳

これ”日本(語)”だからおk  d(^^)

以上、非常にわかりやすい返答でした。

モンゴルに行くことがあれば、

筆者
筆者

Би Япон хүн(ビーヤポンフン)
(私は日本人です)

というモンゴル語を絶対に覚えておいた方が良いかと思います、護身符として。
(南モンゴルではまた言い方が違うそうです)

ウランバートルのデパートでこんなことがありました。

モンゴル人
モンゴル人

(スマホを渡されてガン飛ばしながら)写真撮ってくれない?(真顔

筆者
筆者

お、おう…(その顔怖いわ…)

写真を撮りスマホを返してあげると、

モンゴル人
モンゴル人

(ガン飛ばしながら吐き捨てるように)カムサハムニダ…

筆者
筆者

お前写真撮ってもらってその態度はないやろwww

朝○龍の結びの一番の時間いっぱいの時を彷彿とさせるガン飛ばしに驚きつつ、てめー俺のこと韓国人と思いやがって無礼千万!とパスポートを見せてすかさず返しました。

筆者
筆者

ビーヤポンフン!!

I’m a Japanese!!!!!!!!

するとそのモンゴル人、どうなったか!

モンゴル人
モンゴル人

😊😊😊😊😊😊

180度、いや、一周回ってさらに180度まわったかのような態度の変わりよう。
「こんにちは♥」「こんばんは♥」「ありがとう♥♥♥」
と本人がおそらく知ってるだろう日本語のすべてを使い、満面の笑みを浮かべていました。
コラコラ、さっきの朝○龍の結びの一番の時間いっぱいの時のようなガン飛ばしは、一体なんやったんや(笑

ちなみに、「親日」を「日本人というだけでやさしくされたり良い思いをしたり、声をかけられる」と定義づけると、個人的体感としてモンゴルは台湾以上の親日国です。

筆者は台湾では中国語と台湾語で事足りるのでそれしか使っていないせいもあるのか、台湾で上記のような目に遭ったことがほとんどありません。なので「台湾は親日」は、筆者の中では夢幻のファンタジーになっています(笑

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モンゴルの嫌中感情を焚き付けるもう一つの原因

ただでさえすさまじいモンゴル人の嫌中感情、それをさらに悪化させる、いやモンゴル人のプライドを逆撫でするような事が起こっています。
大きく分けると2つ。

「中国四千年」とか「五千年」といっても、唐は鮮卑だし元はモンゴル人だし、清は満洲人とモンゴル人の連合王国。漢民族の王朝ちゃうやんけwwww

おそらく世界中からツッコミを喰らってるのでしょう。さすがは中国人、その矛盾を解消する屁理屈を思いつきました。それが!

魔性の言葉、「中華民族」

つまり、歴史の民族全部「中華民族」にしてしまえば「中国五千年」の一気通貫成立となるわけで。

中華民族の定義?そんなもの筆者もわからんし、中国人にすらわからんしどうでもいい(笑

鮮卑のように現存しなかったり、漢民族に呑まれて民族アイデンティティをほぼ失った満洲族はさておき、モンゴル人はまだ現存しているし、固有の民族文化を持っています。そして、モンゴル人はその文化に誇りを持っている。

ウランバートル、スフバートル広場のチンギスハーン像
ウランバートル、スフバートル広場のチンギスハーン像

モンゴルの英雄とくれば、ユーラシアに巨大な帝国を築いたチンギス・ハーン。これは説明不要でしょ。

日本で、そして現地で建設にちょっとだけながら関わってたので、このプレートが誇らしい

ウランバートルの新空港。その名前もチンギスハーンであります。

そんなモンゴルの民族的英雄を、中国人はタブーに触れることに。

中国人
中国人

チンギスハーンは中華民族アル!

この「悪魔の言葉」で、「かつての領土を取り戻す」という嘘でモンゴル侵略、いや今でこそ言わないけれども、ロシアやウクライナも「自国領土」ということを正当化しようとしているのですが(優先順位が低いだけで、やろうとしてることは台湾や尖閣と同じ)、それ以上に民族的英雄を「中国人」にされた彼らの怒りはすさまじい。

中国人
中国人

天皇陛下は中国人アルよ!

なんて言い出したら、言語化できない嫌悪感と怒りが湧いてくるでしょ?それ以上の感情をモンゴル人は抱いているわけで。

あとは、同じモンゴル人が住んでる南モンゴル(あ、内蒙古なんて書いたら怒られるからね!)同胞に対する仕打ちや、元々豊かな牧草地なのに勝手に農地にして砂漠化させてる自然破壊に対する怒りもあります。

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